現在の熊野古道。
滝尻王子から本宮大社まで約40キロの行程を2~3日間かけて歩く道です。
ここには人の一生が物語のように繋がっています。
滝尻王子
紀伊田辺駅または白浜駅からバスに乗って滝尻王子で下車すると、熊野九十九王子の中で格上の五体王子の一つ、滝尻王子があります。ここは熊野三山の入口と言われていて、ここからまさに熊野の霊域に入って行きます。
最初はかなり急な坂道。サンティアゴ巡礼の800キロの道は最初ピレネー山脈を登るんですが、その経験者のほとんどが「滝尻からの登りの方がハード」と表現する険しい道。
登ってしばらくすると、胎内くぐりと乳岩があります。
ここで生まれ変わりを体験できます。
そこから高原まではずっと登りです。滝尻から高原まで約2時間。棚田百選に選ばれた高台の絶景を見ることができます。ここで一息休憩した後、また登ります。
この高原からあと、近露までは3~4時間の行程ですが、登りと下りの繰り返しです。自然を楽しみながら山岳信仰の没入感がある所です。近露の手前に「牛馬童子」があり、牛と馬を横に並べてまたがる童子の像があります。この像を過ぎるとようやく近露の里が見えてきます。
ホッとしたのも束の間、近露から野中の継桜王子までも体に堪える坂道。
この継桜王子には「秀衡桜」という桜があり、滝尻王子に残してきた子供の無事を祈って桜の杖をさしたところ、桜の木が接ぎ木されたので継桜王子という名前になったそうです。
この継桜王子がちょうど滝尻から本宮大社までのだいたい中間地点です。出産した子供が子離れした様子です。
今は水害の影響でう回してしまいますが、継桜王子のあと、しばらくすると仲人茶屋があります。
男坂と女坂の出会う場所だそうです。
そして、本宮大社の手前7キロのところに発心門王子があります。スタートした滝尻王子と同じく五体王子の一つです。発心というのは仏教に目覚める事。
ここから、本宮大社までの道のりは緩やかな下り坂です。途中伏拝王子は初めて本宮大社があった大斎原が見え、伏して拝んだそうです。
本宮大社に向かう途上、「蘇りの道」という道標を何度か見かけます。
余生をゆっくり過ごしつつ、信仰心が芽生え、浄土へ蘇りを願う様子をイメージできます。
こうして滝尻から誕生し、山あり谷あり進んでいき、子供の事を思いながら仲人の下へ送り出し、苦労のかいがあってか、余生を緩やかに過ごしながら来世を願う、人の一生のような熊野古道
の巡礼は自分の人生を振りあえるきっかけにもなる道なのではないかと思うのです。
