私は田辺市に移住することが決まった時、会社を辞め、有給を利用してサンティアゴ巡礼を5日間行ってきました。
初めてのヨーロッパ旅行がサンティアゴ巡礼です。
見るものすべてが異国情緒にあふれていました。歩くという事は、道すがら見るものの情報量がとても多いという事ですね。自動車や列車では何も記憶に残らないであろう情報が印象的になります。
これは歩いてみないとなかなかわからないですね。
とにかく歩きながら「自分の歩いているこの一歩が100キロに繋がるんだ」という不思議な感覚。
一緒に歩いている人が同じ聖地を目指しているという共通認識。一体感というほど近しいわけではなく、適度に話しかけやすいし、必要なければ放っておいてくれる距離感。
歩いていて「なぜ日本人はこのサンティアゴ巡礼を知らないんだろう!みんなに勧めたい!」と思うようになりました。
これを語りだすと脱線しすぎてしまいますね。
熊野古道中辺路とサンティアゴ巡礼の共通点は、
・独自の文化を形成した世界遺産であること
・千年以上の歴史を持つこと
・すべての人に開かれた道であるという事
だと思います。
これは「現在は便利な乗り物があるのに何故わざわざ歩くんだろう?」という疑問の一つの示唆に繋がると思うのです。
そうです。外国人も過半数の人は歩くというこの巡礼は決して一般的な趣味ではありません。(笑)ニッチなものです。
これはトレッキングというある種のスポーツというかアクティビティなのです。
それは、サッカーや野球をするのに近い感覚で、競い合うという事はなく、そういう意味では登山やハイキングに似ているかもしれません。
「山があるから登る」のと同じように「道があるから歩く」のです。
熊野古道中辺路のサンティアゴ巡礼の違いは
・中辺路は獲得標高(何度も上り下りするのですが、そののべ上り標高)が一日当たり1000mを超えるのに対し、サンティアゴ巡礼はそこまでアップダウンがなく、その代わり距離が長い
・中辺路は山岳信仰や修験道といった修行の要素があるが、サンティアゴは精神的なものはあっても修行ではない
・中辺路は死の国への旅だったり蘇りの地という死生観があるが、サンティアゴには贖罪とか免罪といった罪から逃れるまたは解放される意味合いがある
といった所でしょうか。
確かに、サンティアゴ巡礼は規模の大きさにびっくりします。物理的な距離もそうですが、歩いている人の多さは、一概に比べられないにしろ、巡礼証明書の発行数が近年40万人を超えていることもすごいです。
対する熊野古道は、巡礼者の数を数えるのは大変難しく、同じような指標がないのが現状ですが、
多く見積もっても5万人を超えることはないと思います。
(ここでいう巡礼者とは参拝者ではありません。熊野古道を歩く人です)
私はこの巡礼者の数の違いは純粋にインフラの違いだと思っています。
しかし、これはプロモーターである田辺市熊野ツーリズムビューローの戦略でもあるのです。
それは「オーバーツーリズムを産まない、サスティナブルで上質な観光地」を狙った結果です。
このおかげで我々宿泊施設は安心して営業できる(ブランドが保たれて人気が長続きする)という恩恵にあずかっています。
私がゲストハウスを開業した時、近所の宿泊施設は6~7軒で一軒当たり部屋数も2~3部屋しかない所しかありませんでした。
今はそれが30軒くらい増えましたが、それでも足りでいない状況です。
近所というのは近露・野中地区の事です。
ここは滝尻から本宮大社まで歩くときに約40キロあるため、途中で宿泊する必要があるのですが、その適地が近露・野中になります。
